b型肝炎特別措置法って?知っておきたいb型肝炎の基礎知識

2012年に、「特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法」(特措法)が施行されました。これは、b型肝炎による被害者を救済するために制定された法律です。b型肝炎については、名前を聞いたことがあっても実態はよくわからないという人が多いのではないでしょうか。

今回は、特措法の制定に至るまでの歴史やb型肝炎の基礎知識を解説します。

がん治療がb型肝炎キャリアにもたらす危険性

b型肝炎とは?

b型肝炎は、HBVと呼ばれるウイルスによって引き起こされる、今から約50年ほど前に発見された疾患です。HBVは世界中に幅広く分布しており、とくに東南アジアやアフリカでは人口の8%ほどが感染しています。日本における感染者は人口の約2%とされています。

感染経路としては、輸血や注射針の使い回しによる感染と、性交渉や分娩を通じた感染の2通りの経路が存在します。b型肝炎の症状には、倦怠感や疲労感、食欲減退、嘔吐や腹痛といったものがあります。潜伏期間はおおむね60日から150日とされており、発症する場合は感染から平均して90日ほど経過した頃にこれらの症状が現れます。

ただし、b型肝炎に感染したら必ず症状が現れるとは限りません。慢性b型肝炎に感染した場合、体内にウイルスがあっても症状が現れないため、検査を受けなければ自分でも感染していることに気づかないことがあります。

この場合、知らず知らずのうちに他の人にウイルスを移してしまう恐れがあるので、非常に危険です。b型肝炎に感染した際は、すぐに入院し安静治療することが推奨されています。また、肝臓への負荷を避けるため、タバコやアルコールは控え、脂肪分の多い食事も減らさなければなりません。

初期症状が軽くても、将来的に肝硬変などの病気にかかるリスクがあるため、b型肝炎に感染したらすぐに治療をする必要があります。

b型肝炎は完治するの?

急性b型肝炎の場合、適切に治療を行えば比較的すぐに回復します。一方、慢性のb型肝炎に感染した場合、体の中にウイルスを持った状態で生活を送ることになります。現在、b型肝炎を完治する方法は研究開発が進んでいる途中で、まだ確立されてはいません。

ただし、肝臓への負荷を減らしながら治療を続けることでウイルスの活動を遅らせ、症状が出るリスクを抑えることはできます。実際にb型肝炎に感染していても症状が出ることなく一生を終える人も一定数います。もしb型肝炎に感染していた場合も、慌てず医師の指示に従うようにしましょう。

日本におけるb型肝炎の歴史

日本では、b型肝炎をめぐって国と患者が裁判で闘ってきた歴史があります。1989年、集団予防接種における注射器の連続使用などが原因でb型肝炎に感染した患者が、国を相手取って札幌地裁に提訴しました。この訴訟の背景には、注射器の連続使用によるHBVウイルスの伝染が社会問題化していたにもかかわらず、国の対策が周知徹底されていなかったという経緯があります。

この裁判では2006年に最高裁が国の責任を認めて賠償金の支払いを命じる判決を出し、原告勝訴となりました。しかし国は、当時の原告となった5人の患者のみに賠償金を支払い、他の患者については救済する姿勢を見せませんでした。

これを受けて全国の患者が立ち上がり、2008年頃から各地で訴訟が行われています。ニュースでも取り上げられた有名な出来事としては、すべてのb型肝炎患者への救済を求めて日比谷公園に座り込んだ「真冬の座り込み宣言」などがあります。

賠償の姿勢を見せない政府に対して、当事者である患者や支援団体が粘り強く闘争を続けたのです。こうした運動の流れを受けて、2011年に国と原告団・弁護団は和解についての基本合意を締結しました。基本合意においては、国が責任を求めて公式に謝罪することや、和解金の金額および対象者の認定要件が定められています。

また、患者が不当な差別や偏見を受けることがないように国が啓発活動に取り組むことや、肝炎ウイルス検査の促進、感染被害の真相究明についても合意しました。

慢性b型肝炎の人も運動をしよう

特措法の内容は?

2012年の特措法では、国との和解が成立した対象者に対して国が給付金を支払うことを定めています。

この制度による給付金の支払い期間は、法律が施行された2012年から10年後の2022年までの間に限定されており、当該期間においては簡素な裁判手続きで給付金を受け取ることが可能です。

賠償金支払いの対象者は、集団予防接種やツベルクリン反応検査などによる感染者で、およそ45万人と推定されています。自分が対象者かどうかは医療機関に相談すれば確かめることができますので、該当する可能性がある人は相談するとよいでしょう。

給付金を請求するためには裁判手続きを取る必要がありますが、弁護士費用は国から支給され、和解交渉の手続きも整備されているので、対象者の手続き面での負担は軽くなっています。こうした制度が整備されたことも、長年にわたって患者が裁判闘争を継続してきたことの成果といえるでしょう。

b型肝炎について気をつけたいこと

大がかりな裁判闘争が行われて法律まで制定されたのは、b型肝炎の問題の深刻さを示しています。b型肝炎は、感染すると生活に支障をきたす恐れがありますし、重篤な症状は出なくても他の人に感染させてしまう危険性や将来的な病気のリスクを抱えることになります。

やはり、まずは感染しないようにリスクマネジメントを心がけておきたいところでしょう。性交渉による感染を防ぐためには、コンドームの着用が重要です。パートナーとの性交渉でb型肝炎に感染してしまった場合、自分でも気づかないうちに他の人へ感染させてしまう恐れ(いわゆる「ピンポン感染」)があります。

これを防ぐため、パートナーと一緒に検査を受けておき、お互いに感染していないかどうかを確かめるようにしましょう。病院や保健所では、b型肝炎のワクチンを接種することができます。年齢によって受けるべき予防接種の方法が変わってくることもありますが、医師と相談して適切な予防接種を受けておくとよいでしょう。

他にも、注射器やカミソリ・歯ブラシといった血液感染の原因になるものの共有を避けることや、血液に触れたら必ず石鹸で洗って清潔にしておくことなど、日常的な部分でも注意することでb型肝炎を防げる確率は上がります。

他人事だと思わず、日ごろから細心の注意を払っておきましょう。